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新評価制度の導入~魂の人事評価~

目的・解決策・成長

急速にあらゆる物事が変化する時代になり、企業として地力を付ける必要性が増しています。
このたび京南オートサービスは、組織力の強化、企業ビジョンの体言化を目指し、「自己申告制評価制度」を導入いたしました。

一般的な評価制度と異なる点は以下です。

・他者評価ではなく自己申告であること
・社員は自身の行った行動(事実)のみを報告すること
・上司の好き嫌いや社員のアピールスキルによる影響を解消

新評価制度の導入以前は、社長判断で昇格および昇給をしておりましたが、社員と直属上司が主体となり申告・評価を行うことで、部下と上司のコミュニケーションの活性化が見られるようになりました。また、社員ひとり一人の行動・意識も変化しました。

京南オートサービスが『保険会社に日本一頼られる企業』になるために、今後も新たな取組にチャレンジしてまいります。

事実をベースにした「納得感」のある評価制度

人事評価制度への懐疑

田澤社長

―――人事評価制度を導入された理由をお聞かせください。

人事評価制度を導入する以前は、社長である私の判断で社員の昇格や昇給を決めていました。

これまで大きな不満や反対意見は上がっていませんでしたが、より組織力を高め、自律した会社運営を行うためにも導入が必要だと考えました。

―――なぜ自己申告制にされたのでしょうか?

直属の上司だけの判断で社員の評価を決めてしまうと、大なり小なり評価者の好き嫌いや、社員のアピールスキルが影響します。また評価とはいえ、なんとなく年功序列のようになったり、役職内の年次順に昇格していったりなど、スキルや頑張りよりも年数が重視される傾向に。
そんな大企業でよくあるカタチだけの評価制度には決してしたくありませんでした。

弊社には良い意味で、大企業のようなガッチリとした上下関係がありません。
自由に意見する若手社員も多い社風ですので、いきなり上司判断の人事評価制度を取り入れたところで納得感がない。
上司もプレイングマネージャーをやらなければならない時もあり、「あなたの点数は○○点だ」と宣告するのも酷かなと。
社長である私が全社員をしっかりと見て、評価するのが一番良い方法だと思いますが、会社を一歩成長させるためにも人事評価制度の導入は必須だなと。

このジレンマを解消するために考え出したものが、「自己申告制評価制度」です。

判断材料は行動した「事実」
社員と評価者の認識不一致をなくす

グッドアクションシート
グッドアクションシート

―――社員さんは、どのように自己評価を行うのですか?

自分の実施した行動を【Ⅰ.態度評価】【Ⅱ.能力評価】【Ⅲ.成績評価】のカテゴリ別に記載して、提出するだけです。

そのため、「自己評価」という表現よりも「報告」という表現の方が適切ですね。弊社では、この報告フォーマットを「グッドアクションシート」と名づけました。

――― とてもシンプルですね。
自分で自分の点数をつけなければならない従来の「自己評価」を想像していました。

自分で自分の点数をつける自己評価では、社員は自身の仕事ぶりを顧みることができるかもしれませんが、一方で「自分は○○点だ。だから会社も同様の評価をしてくれるはず」といった、自己過信や勘違いを引き起こす可能性をはらんでいます。
「自分は頑張ったつもりなのに、上司は評価してくれなかった」「自分の頑張りを見てもらえなかった」などの不満が出てきてしまうでしょう。

人事評価制度で大切と私が思っているのは、評価に対する社員の「納得感」です。
実施した行動、つまり「事実」だけを報告すれば「頑張ったつもり」「やったつもり」「見てもらえなかった」といった不満や、社員と上司の認識の不一致が起こりづらくなると考えました。
書けば事実が蓄積されるため「見てくれない」は通じないわけですから。

企業ビジョンに繋がる行動を明文化

――― 報告内容は、どんなことでも記載していいのですか?

記載する内容は、なんでもよいというわけではありません。評価されるのは、京南グループのビジョンに繋がる行動、つまり「この行動を社員ひとり一人が行えば、会社全体が、目指したい方向へ向かえる」といった内容です。

企業ビジョンにつながる行動例

そういわれても「京南グループのビジョンに繋がる行動とは?」となりますよね(笑)そこで私は、企業ビジョンに繋がる行動例を文言化し、一目で分かるようにしました。事例を挙げることで、社員自らが行動を起こしやすい環境にするといった狙いがあります。表に記載の内容は、数ある行動例の一部です。

また、こちらの文言を作成するにあたって、東京都が運営するコンサルティングサービスの人事労務専門家の方に協力していただきました。約2年がかりで完成させたものです。

報告はスマホでスムーズに。
ペーパーレス化を実現。

―――― 毎週の報告は、どのように行われているのでしょうか。

オンラインの専用フォーマットから、スマホで入力して送信するだけです。ペーパーレスで手書きの必要はありません。思い立ったら直ぐに、自分の行動を記載して送信することができます。

自己評価制度フロー

毎週社員は直属の上長にグッドアクションシートを提出し、部長は上長から送られてくるシートを確認します。
総評は半期に一回。社員は部長とともに、半年間の積み重ねの総括を実施。部長から上がってきた報告を参考に、最終的な昇給や昇格の判断は社長である私が行います。

この自己申告制評価制度は、行動を解析して数値化するような、感情のない制度ではありません。
今までの仲の良い文化はそのまま残し、このシートを通じて少しだけお互いの行動に対して会話が広がることを期待しています。

行動の積み重ねが、文化醸成に繋がる

行動レベルで企業パーパスを落とし込む

――― 自己申告制評価制度導入によって、なにか成果は得られましたか?

一つ目は、社長である私が社員面談をするのではなく、部長が行うようになったことにより、組織としての動きが活発になった点です。
新評価制度に対する不満も現時点では出ていません。

二つ目は、社員ひとり一人の行動が変化したこと。グッドアクションの中に、「電話を3コール以内に出た」という行動例があります。社員全員が日頃からこの行動を意識しているわけですから、実際に私が社内に電話をかけてみても、毎回1~2コール以内に必ず誰かが出るようになったんです。
以前は4コール5コールのときもありました。

私が指摘しなくても、社内は整理整頓されていますし、社員同士助け合う姿勢も見られます。
小さな変化かもしれませんが、着実に社員の行動に変化が表れているように感じます。

――― 会社全体の雰囲気も変わってきているのですね。

私の好きな言葉に「Culture eats strategy for breakfast.」というものがあります。
直訳すると、企業文化は戦略を朝食にして食べてしまう。すなわち、「企業文化は戦略に勝る」という意味です。
社長や事業責任者がどんなに素晴らしい戦略を立てたとしても、それらを実行できる企業文化ができていなければ、目標を実現することはできません。反対に、企業文化がしっかりとできていれば、戦略を立てた際に素早く実行に移せると私は考えています。

文化は、小さな行動の積み重ねや意識の変化で構築されていくもの。
それも、強制的では意味がありません。企業理念を毎朝唱和させられたり、毎日社長が訓示を垂れたり、そんな会社は嫌ですよね(笑)社員自ら行動し、腑に落ちてからこそ構築されていくものなんです。

自己申告制評価制度を通して文化を醸成していく方法は、一見するとまどろっこしい地道な方法に見えるかもしれません。
意識を変革するのは非常に難しいことで他人ができることではありません。行動の積み重ねが習慣になり、気が付いたら意識が変わっていたというのが自然なのではないかと思います。

コミュニケーション機会も増加

田澤社長

――― 他に変化はありましたか?

上司と部下のコミュニケーション活性化が見受けられました。
グッドアクションシートの提出は週1回。
シート内には上司確認欄もありますので、提出毎に今週は何ができたのか、どんな仕事を行ったのか、足りていなかった行動などを一緒に振り返ることができます。
いわゆる交換日記のような感覚ですね。

ここ数年はテレワークの増加により、コロナ禍前に比べて会話の機会が減少しました。
そのような中でも、上司にスマホ一つで自身の行動を報告でき、振り返られるツールがあることで、対話機会が生まれたと感じます。
でも、上司も忙しい時もあると思います、そんな時は1クリックで確認ができるようにしました。

また、出社社員とテレワーク社員を平等に評価できる点も良かったです。
行動した事実を見ますので、「出社したから」「テレワークだから」といった理由で、評価に差が出ることがありません。

「保険会社に日本一頼られる企業」を目指して

課題はマンネリ化

――― 1年間自己申告制評価制度を取り入れてみて、課題に感じたことはありますか?

報告が毎回似たような内容になってしまっている点ですね。行動の反復はもちろんよいことですが、毎週同じ行動をすると、記載する報告内容もコピペになってしまいます。
すると、どうしても飽きが生じるのです。

報告がつまらない事務作業にならないよう、本質は変えずに、評価される行動例をバージョンアップしたり、項目を追加したりと定期メンテナンスが必要だと感じました。

――― 改良を重ねながら、今後も継続していかれる予定なのですね。

まだまだ完璧にはほど遠いと感じています。しかし、それでいいんです。
いろんな事を試行錯誤しながら、少しずつ成長していくことに意味があると思っています。
最初から完璧に確立された人事評価制度なんてありません。たとえあったとしても、いきなり風土に合わないものを採用してしまえば反発の元になります。
現場の様子を察知しながら、徐々にメンテナンスしていく。そうして理想の人事評価制度に近づいていけたらと考えています。

メンテナンスの力で
人も車も美しく、キレイに。

田澤社長

―――今後のビジョンをお聞かせください。

京南グループの企業パーパスは「メンテナンスでときめきを」。
この言葉には、「弊社のメンテナンスで車を美しくすることで、その車に乗る人の気持ちや風貌もシャキッと美しくしたい」という想いが込められています。
そして、「京南オートサービスを『保険会社に日本一頼られる企業』にする」ことが会社のビジョンです。

このビジョンを達成するには、車や顧客の方々に直接関わる社員たちの自発的な行動が必要不可欠です。
お客さまからの電話に素早く出る、事務所を綺麗に掃除する、道具を丁寧に扱う、納期を順守する。一見すると「当たり前」のように思うかもしれませんが、この当たり前を確実に行えることこそが最も大事だと思っています。

自己申告制評価制度を通し、これらの「人としての良い行い」を積み重ね、全社員がパーパスに向かって進み続けられる環境を作るのが、社長である私の役割です。
まだまだ発展途上の会社ですが、全社員一丸となり『保険会社に日本一頼られる企業』を目指して尽力してまいります!